サース通信年4回発行のサース通信から毎号の特集記事のみを抜粋しています。
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[特集] 築46年の渋谷駅前マンション(Kビル)・建て替え奮闘記 10:00
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    〜分譲マンション管理組合理事としての取り組み〜
    話し手=大竹比呂志氏(鼎設計事務所、SAHS理事)/開催=2003年4月4日


     分譲マンションが住まいの選択肢として一般的になり、急増したのは昭和40年代です。しかし、今回ご紹介するKビルのように、それ以前に建てられたマンションも少なからずあり、それらの多くが必要に迫られて建て替えの検討を行っています。検討する際の最大の課題は、建て替え費用を捻出できるかということですが、それ以前に所有関係の複雑さや住み手の状況の違いなどから、最初の話し合いの場をつくることがまず難しいというのが現状です。
     大竹さんは専門家として長年、公団や民間企業などの集合住宅およびコーポラティブ方式の集合住宅の計画・設計を行ってきた方です。また、老朽マンション建て替えアドバイスも行っています。その大竹さんが今回、マンション建て替えの当事者となりました。
     Kビルは来年、借地契約の更新時期を向かえるため、建て替えるか、修繕工事を繰り返して使い続けるかを判断する瀬戸際に立っています。昨年6月から管理組合の理事になり、入居者・所有者の方々へのヒアリングを行いながら、意見調整を進めている大竹さんに、その取り組みについて話していただきました。


    ■昭和32(1957)年建設の分譲マンションのいま

     Kビルは渋谷駅から歩いて3分ほどのところにある、11階建ての分譲マンションです。地下1階と1〜2階が店舗・事務所、3階から上に2DKの住宅が現在81戸入っています。住まいとして使われているのは全体の3分の1ほどで、残りの3分の2は事務所などに利用されています。入居者のなかには、竣工当時からの居住者が15世帯入っていますが、入居当時に働き盛りだった方々なので、現在は70歳代、80歳代になっています。
     管理組合では耐震性への不安や、水道、ガス、電気などの設備能力が近年の機器性能に合わなくなったことなどをふまえ、かなり以前から建て替えの必要性について話し合ってきました。建設当時の事業主体である東京都住宅供給公社にも、建て替えの要望を伝えてきました。それ以外にも、建て替えに向けたシミュレーションや事業計画を何度となく企て検討はしてきましたが、折り合いがつくものにはなりませんでした。


    ■分譲マンション建て替えの難しさ

     築年数を経た都心の多くのマンションがそうであるように、Kビルの場合も80年代バブル経済の時には、デベロッパーが等価交換方式の計画を持ちかけてきました。しかし、さほど規模が大きくないため、所有者の床が増えるようなメリットが生まれるものではありませんでした。そうこうするうちに不景気になり、所有者が参加できる形の等価交換は成り立たなくなりました。
     分譲マンションの建て替えがスムーズに進まない要因のひとつに、「建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法)」の問題がありました。この法律には居住者の権利を守ることは示されているのですが、建て替えのような権利変換がおこる事態には対応できないものでした。
     この問題を解決するために昨年、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下、円滑化法)」(平成14年6月19日公布)がつくられました。Kビルもこの法律ができたことで、建て替え計画が実現する可能性が大きくなりました。


    ■所有者主体の建て替えにむけて

     マンションの建て替えは住み手が主体になり、力を出しあって進めるのが基本であり、コーポラティブ住宅と同じだと言えます。しかし、コーポラティブ住宅は参加者全員がやる気をもって臨んでいますが、建て替えの場合は状況が異なり、一般的に「できることならやりたくない」人が4割程度はいるもので、その人たちも納得する形で進めなくてはいけないという難しさがあります。
     所有者が主体になるという点では、これまで等価交換方式ではデベロッパー主体で進んできましたが、円滑化法ができたことによって、区分所有者が法人格を持つ「建て替え組合」をつくることができるようになりました。Kビルの場合は数十億円の建て替え事業となり、所有者だけで資金回収リスクを負うのは大変なので、建て替え組合員としてデベロッパーの参加を求める方向で、検討を進めています。
     検討内容としては、デベロッパーも利益を上げつつ、当初からの入居者の方々がいかにスムーズに住み替えができるか、というバランスの取り方が大きなポイントになっています。

    (以上、大竹氏談)


    ■Kビルの建物概要

    所在地=東京都渋谷区金王
    構造=鉄筋コンクリート造(地下1階+地上11階)
    延床面積=約5,065m
    建築面積=約461m
    住戸部分の戸当たり専用面積=約34〜36m
    管理組合の理事=12人




    (Kビル写真)



    | サース通信08号/2003年9月 | - | - | posted by news-npo-sahs -
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